令和8年 2月3日節分の星供養ご報告

毎年、節分近くになると高野山をはじめ、真言宗の寺院で行われる「星供養(星まつり)」。清浄心院では毎年節分の日に、北斗七星(ほくとしちせい)を中心として、九曜(くよう)〈※1〉と二十八宿(にじゅうはっしゅく)〈※2〉を描いた星曼荼羅(ほしまんだら)が掲げられます。
この行事は宿泊の方のみ参加できる行事であり、本堂(廿日大師堂)での星供養は一般非公開ですが、囲炉裏の間(土室)にて僧侶が読経する儀式には参列することができます。今回は一般非公開の本堂(廿日大師堂)での儀式、囲炉裏の間(土室)での儀式をホームページでのみ特別に公開いたします。


2月3日は総本山金剛峯寺をはじめ、各塔頭寺院で星供養が行われる中、清浄心院では日の入り後、午後7時からの法要が始まります。宿泊された方々は参加自由ですが、開始時間にはすでに囲炉裏の間には多くの参列者が集います。囲炉裏には火が焚かれ、煎り豆がお供えされて、僧侶たちによる読経が始まります。
ちょうど同じ時刻、本堂(廿日大師堂)での星供養も始まります。星曼荼羅の前には幡(はた)や御幣(ごへい)、ナツメ、茶葉などが並びますが、興味深いのは麦が入った混ぜご飯に、ロウソクが立てられるお供えものです。これは芳飯(ほうはん)という室町時代に生まれ、僧侶たちが食べ始めた「法飯」にルーツを持つ混ぜご飯と言われ、郷土料理「かきまぜ」となったものに、仏の智慧を象徴するロウソクを立てたものという説があります。


法要での所作は完全非公開のため、詳細はお伝えできませんが、燈籠とロウソクだけの空間で、役僧が一人きりで秘儀を行う神秘的な空間はこの儀式ならでは。星曼荼羅にお供えものをして印を組み、観想の世界で祈りが捧げられます。
この星供養で祈願されるのは何事もなく、健康であることを祈る「息災(そくさい)」、財産や出世などを願う「増益(ぞうやく)」、寿命の延長を願う「延命(えんめい)」など。その年の星を祀り、災難を逃れるように、星まわりの良い年にはさらに良くなるように祈ります。

囲炉裏の間での読経は1時間ほど。午後8時には終わり、豆まきが始まります。豆まきする人は宿泊者も含め台所にて手を洗い、口を清めますが、それまで囲炉裏の間で温められたお湯を使います。
清めが終わったら、何班かに分かれ、寺院内をまわります。本堂と囲炉裏の間にお供えされた煎り豆が配られ、「福(ふく)は内(うち)!」と声を挙げながら、各部屋に豆を置いていきます。寺院内に僧侶と参列者(宿泊者)の大声が響きわたる様子はこの日だけの光景。寺院の豆まきに参加する、貴重な体験ができます。
最後は正門が開かれ、一人ずつ「鬼は外(そと)!!」と言いながら、門の外へ豆を投げて終了。各部屋に置かれた豆は翌日に回収します。豆は「魔滅(まめ)」という意味もあり、通常の豆まきは鬼を追い払うものですが、その昔、古い習俗が残る地域ではとても変わった豆まきをしていたのだとか。






清浄心院 高野山文化歴史研究所の木下所長は「地域によっては《福は内、鬼も内》と言って豆まきをしたそうです。それでは鬼とは何か? じつはご先祖様の霊なのです。鬼(おに)の語源は穏(おん)だとされています。隠れていて見えないものということです。 日本の鬼は秋田県の大晦日に行われる《なまはげ》と同じで、ご先祖様がこの世に現れたお姿なのです。本来、豆の役割とは何かというと、鬼を追い払うものでなく、悪い厄をうつし祓うためのものなのです。だから、厄がついた豆は捨てられることになる訳です」と教えていただきました。
仏教以前にあった古の日本の信仰。高野山に近い吉野山の金峯山寺では、今でも《福は内、鬼も内》を節分で唱えています。日本の年中行事は本当に奥深いのです。
〈※1〉九曜=日・月・火・水・木・金・土の七曜星に羅睺星(らごせい=凶にあたる星)と計都星(けいとせい=災害をもたらす星)を加えたもの。〈※2〉二十八宿=天球を28のエリアに分割したもの。
取材・文/藤田ベリー
下記にて2024年の星供養を解説しています。

