恵観住職出版記念インタビュー

『お大師さまの「生老病死」学 苦難の先に救われる』(セルバ出版)が発売中!

池口恵観住職の新刊『お大師さまの「生老病死」学 苦難の先に救われる』が先月セルバ出版より発売されましたが、清浄心院 高野山文化歴史研究所の木下浩良所長が、今回の本の編集を担当しました。先日、この本の趣旨について惠観先生へ木下所長がインタビューをいたしましたので、その模様をお伝えします。

新刊『お大師さまの「生老病死」学 苦難の先に救われる』
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孤独のときだからこそ、
その時の隣には必ずお大師さまがいらっしゃいます。 

木下浩良所長 惠観先生、この度はご著書の刊行、おめでとうございます。

池口恵観住職 ありがとうございます。これも、木下先生が編集をして下さったお蔭です。

木下所長 いえいえ、私はまとめさせて頂いただけです。ところで惠観先生、今回の御本は旧稿をまとめられたご著書ですが、公表されて何年が経たものなのですか。

池口住職 もう、19年も前に書いたものです。

木下所長 そうなんですね。しかし、私はそんな前に執筆なされたものとは思えませんでした。書下ろしのような気さえしました。

池口住職 本当に月日が経つのは早いものです。

木下所長 書かれておられる内容が、現在の諸問題とマッチしているものと存じます。今回の御著書は、本当に今こそ読まれるべきかと思いました。

池口住職 そう仰って頂きますと、嬉しいです。

木下所長 この度の御本のコンセプトを一言で伺いたいのですが。

池口住職 「生老病死(しょうろうびょうし)」とは、お釈迦さまの教えです。人間が生まれて亡くなるまで、様々な労苦があるものです。人間が生きているうちに経験するそれらの壁に立ち塞がれた時、その時に正しく生きることを説かれたのがお釈迦さまでした。そのお釈迦さまの教えをさらに具体的に説かれたのがお大師さまでした。そのお大師さまの教えが理趣経の教え、ということになるのです。

木下所長 理趣経は難解な真言宗の経典かと思いますが。

池口住職 いえ、そんなことはありません。理解が少しでも深まると実に分かり易い経典だと思います。今回の出版はそのことを皆様に知って頂くことを目的として、本を出版したのです。

木下所長 もう少しその理趣経で説かれているところをお話いただけませんでしょうか。

池口住職 はい、理趣経は人間の欲望を肯定する経典で、さらには人間が持つ可能性の素晴らしさを説いたものなのです。宗教といいますと、欲望を否定したところと思われていますが、決してそうではない。むしろ、欲望は必要だと理趣経では説いているのです。

木下所長 今の惠観先生のお言葉には、何か救いを頂いたような気がします。

池口住職 欲望があってこそ、人間は救われるものと思います。お大師さまがそのことを一番分かっていらっしゃった。お大師さま以前の日本の仏教は国家仏教で、国のための宗教だったように思います。その点、お大師さまは違っていた。お大師さまはさらに教えを個人へと展開されたものと思います。それも、特権階級だけでなく一般庶民にもだれであっても、まさに世界人類の人々の救済へとお大師さまは見ていらっしゃっていたのですね。

木下所長 惠観先生、本当にいいお話ですね。

池口住職 欲望がないと正しい行いができません。欲望といいますと、全ての欲のことを言っているように聞こえてくるものと思いますが、私が申したい欲望とは正しい欲望ということになります。正しい欲望があってこそ、人間はこの世で光る存在になるものと思います。生きているうちに人はこの世の光となって、世のため人のために、それぞれの立場で活躍すべきだとお大師さまも仰っているものと思います。それでこそ即身成仏だと、私は思います。

木下所長 ありがとうございます。今の先生のお言葉は、私たちが日々生きていく上で勇気を頂いたように思います。

池口住職 そのことを、少しでも読者の方には感じていただいたならば、著者としては望外の喜びです。後ろを向かないで、前を向いて生きましょう。必ずお大師さまが見てくださっています。一人でも孤独だとは思わないで下さい。孤独のときだからこそ、その時の隣には必ずお大師さまがいらっしゃいます。そのための一助に、今回の拙著がなればと心から願っています。

木下所長 今の先生のお言葉も本当に嬉しいです。ありがとうございます。本当に目次を一見しただけでも、何か救われるような気持ちとなりました。惠観先生、お忙しい中お話頂きありがとうございました。

池口住職 いえ、私の方こそありがとうございました。お大師さまの教えの一旦を今回の拙著の中からつかんで頂ければ、私とすればこの上もない喜びです。

池口恵観住職

池口恵観
高野山別格本山清浄心院住職。高野山真言宗宿老・大僧正。傳燈大阿闍梨。昭和11年11月15日、鹿児島県生まれ。高野山大学文学部密教学科卒業後、昭和48年烏帽子山最福寺法主に就任。昭和63年高野山真言宗傳燈大阿闍梨、平成18年高野山真言宗大僧正。また、北海道大学、山口大学、岡山大学、京都府立医科大学、兵庫医科大学、高野山大学などで客員教授など、広島大学、金沢大学などで非常勤講師を務め、医学博士でもある。平成元年に仏教史上初の百万枚護摩行を成満。

木下先生

木下浩良
清浄心院 高野山文化歴史研究所 所長。高野山大学総合学術機構元課長、高野山大学密教文化研究所受託研究員。神戸学院大学非常勤講師。日本山岳修験学会評議員、九度山町文化財保護審議会委員・日本遺産女人高野調査委員。福岡県柳川市生まれ。1983年、高野山大学文学部人文学科国史学専攻卒業後、高野山大学職員に。柳田國男の孫弟子である高野山大学名誉教授の日野西眞定師に師事。