池口惠観住職2023年秋インタビュー 「祈願と護摩行」について 

11月19日(日)毎年恒例の年間行事「氏神祭り」が行われます。清浄心院の氏神様(大黒天・弁財天・正一位稲荷大明神の御三体)はおよそ1000年間清浄心院をお護りくださっている大切な鎮守様。その「氏神祭り」において「商売繁盛・家門繁栄大護摩祈願祭」が行われますが、今回は「氏神祭り」に向けたインタビュー企画です。池口惠観住職が今まで「祈願」や「護摩行」についてどのような思いで執り行われてきたのか? 住職にとっての「祈願」や「護摩行」について清浄心院 高野山文化歴史研究所 所長でもある木下浩良氏が聞き手となり、惠観住職にお話をお伺いしました。

お大師さまは私たち一人ひとりに
寄り添っていらっしゃる。
決して一人ではありません 

木下浩良所長 「祈願(きがん)」と言いますと何か非常に改まったもので、何かおごそかなものと思ったりしますが、惠観先生が想っていらっしゃる「祈願」のイメージについてお話いただきたく存じます。

池口恵観住職 そんなに、かしこまらないでいいかと思います。皆、お一人おひとり性格が違うように、祈願もそれぞれ違っていいのです。祈願とはそんなものと思います。

木下所長 ではどんな祈りでも受け入れて頂けるものなのでしょうか?

池口住職 そうです。祈願の中身に差別などありません。みんな平等です。そのことは、お大師さまも同じように想われていたはずです。自信を持って下さい。幼子の祈願であっても、大人の祈願と同じなのです。祈願に差別などあってはならないと心から思っています。

木下所長 そう仰っていただくと、何か肩の力が抜けたような気がしますが、私は祈願すること自体が、何か独りよがりな欲望のような気がして、何か後ろめたい気持ちにもなるのですが。

池口住職 そのことは、他でも時々質問を受けることですが、祈願される中身にはそれぞれの自己実現への想いがあるものと思いまが、それでいいのです。私は、その自己実現に寄り添い、その方の願いと共に祈願すること、そのことがお大師さまを信じる僧侶の重大な役目だと思っています。

木下所長 惠観先生、その教えは私が思っていたこととは真逆で、びっくりしました。もう少し、お話いただけませんでしょうか。

池口住職 宗教と言いますと、願いや欲望を持つことは悪いことだと思われるきらいがあるようですが、お大師さまはそんなことは一言も仰っていません。むしろ、願いや欲望は必要だと仰っています。お大師さまは発想が逆だったのですね。願いや欲望がないと、人は成長しません。欲望があっていいのです。

木下所長 そう伺いますと、確かにイエスキリストが、何人もの病の人たちを治していらっしゃったことを思い出します。

池口住職 そうです。それでいいのです。お大師さまもイエスキリストと同じ想いだったと考えます。お大師さまの教えの基本にあるのは、「現世利益(げんぜりやく)」といって、あの世ではなくてこの世で利益を受けることなのです。願いは叶います。私たち僧侶は、皆様の願いが叶うように一心にお祈りを皆様と共に致します。

木下所長 ありがとうございます。人間、孤独はさみしいものですが、今仰っていただいた、共に祈っていただけると思いましたら、何か救われたような気がしてきました。

池口住職 清浄心院では毎日、皆様の願いが叶うよう護摩行(ごまぎょう)が行われています。中には、木下先生が仰った一人だからと、孤独に思い悩んでいらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方こそ、清浄心院へお参りください。我々僧侶の隣にはお大師さまもいらっしゃって、皆様の願いが叶うように祈りされているものと信じています。「同行二人(どうぎょうににん)」という言葉があるように、お大師さまは私たち一人ひとりに寄り添っていらっしゃるのです。決して、一人ではありません。 

木下所長 宗派が違ってもいいのでしょうか?例えばキリスト教信者であっても、護摩行に参加できるのでしょうか?

池口住職 もちろん、宗派を問うことなど致しません。お大師さまの教えは海よりも深く山よりも大きいものです。本当に懐が深いものなのです。

木下所長 ありがとうございます。今の惠観先生のお言葉には、本当に救いがあるものと存じます。

池口住職 清浄心院では、皆様のご参拝を心からお待ち致しております。清浄心院で祈願していただき、護摩行で皆様と共に願いが叶いますようにお祈り致します。

木下所長 惠観先生、ありがとうございました。

池口恵観
高野山別格本山清浄心院住職。高野山真言宗宿老・大僧正。傳燈大阿闍梨。昭和11年11月15日、鹿児島県生まれ。高野山大学文学部密教学科卒業後、昭和48年烏帽子山最福寺法主に就任。昭和63年高野山真言宗傳燈大阿闍梨、平成18年高野山真言宗大僧正。また、北海道大学、山口大学、岡山大学、京都府立医科大学、兵庫医科大学、高野山大学などで客員教授など、広島大学、金沢大学などで非常勤講師を務め、医学博士でもある。平成元年に仏教史上初の百万枚護摩行を成満。

木下浩良
清浄心院 高野山文化歴史研究所 所長。高野山大学総合学術機構元課長、高野山大学密教文化研究所受託研究員。神戸学院大学非常勤講師。日本山岳修験学会評議員、九度山町文化財保護審議会委員・日本遺産女人高野調査委員。福岡県柳川市生まれ。1983年、高野山大学文学部人文学科国史学専攻卒業後、高野山大学職員に。柳田國男の孫弟子である高野山大学名誉教授の日野西眞定師に師事。

11月19日〜21日の3日間、毎年恒例の年間行事「氏神祭り」では池口恵観住職による商売繁盛・家門繁栄大護摩祈願祭を行います。現在、遠隔祈願の予約お申込を受け付けております。下記をご参照ください。